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発達特性のある子の不登校:いま起きていること、最初にすること

結論

学校に戻ることは、もう国の目標ではありません。 2019年の文部科学省通知で、学校復帰を前提とした従来の通知は廃止されました。現在の目標は「社会的に自立すること」です。

そして、発達特性のある子どもの不登校で先に取り組むべきなのは、登校の説得ではありません。不安を減らすことと、学校側の「満たされていないニーズ」を埋めることです。研究が一貫して示しているのは、この2点です。

この記事でわかること

いま起きていること

文部科学省が2025年10月29日に公表した令和6年度(2024年度)の調査によると、

項目 令和6年度
小・中学校の不登校児童生徒数 353,970人(小137,704人/中216,266人)
1,000人当たり 38.6人(中学校は67.9人)
高等学校 67,782人(前年度から減少)
90日以上欠席している割合 54.2%(191,958人)
学校内外で専門的な相談・指導を受けていない 38.3%(135,724人)

12年連続で過去最多を更新しました。ただし、報じられにくい事実が2つあります。

増加率は2.2%まで鈍化しました(前年度は15.9%増)。そして新規の不登校児童生徒数は153,828人で、9年ぶりに減少しています。増えているのは、主に長期化している層です。90日以上が半数を超えていることと合わせて読むと、「新しく休み始める子」より「休みが続いている子」が課題の中心に移りつつあることがわかります。

「要因」の調べ方が変わりました

令和6年度の調査から、設問が「不登校の要因」ではなく「不登校児童生徒について把握した事実」に変わりました。 以前の「いじめ/学業不振/無気力・不安」といった3分類は、現行調査では使われていません。ネット上の解説の多くは、まだ旧分類のままです。

現行は15項目の複数回答で、学校が把握した事実を挙げる形式です。小・中学校で多かったものは、

学校が把握した事実 割合
学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった 30.1%
生活リズムの不調に関する相談があった 25.0%
不安・抑うつの相談があった 24.3%
学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた 15.6%
いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった 13.2%

そして注目すべきことに、「障害(疑いを含む)に起因する特別な教育的支援の求めや相談があった」という項目が、令和6年度から独立して設けられました。 発達特性と不登校の関係が、国の調査の中で正面から扱われるようになったということです。

この項目の割合の数値は、概要版の原表でご確認ください。本記事では、項目が新設された事実のみを扱います。

発達特性と不登校の関係

まず前提を確認します。通常の学級に在籍し、学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は、小・中学校で8.8%(小10.4%、中5.6%、高2.2%)です(文部科学省、令和4年12月公表)。

この調査には重要な注記があります。「学級担任等による回答に基づくもので、専門家チームの判断や医師の診断によるものではない」「発達障害のある児童生徒の割合を示すものではない」。 数字を引用するときは、必ずこの注記もセットにしてください。

研究が示していること

海外の研究では、自閉スペクトラム症のある子どもの欠席リスクが一貫して高いことが報告されています(Nordin et al., 2023、42研究のスコーピングレビュー)。オーストラリアの研究では、自閉症のある生徒486名のうち43%が持続的欠席の状態にあり、欠席理由の43%が「登校しぶり」でした。怠学(truancy)はほぼ皆無です(Totsika et al., 2020)。

日本の研究もあります。不登校外来を受診した子どもを比較した研究では、ASD群のほうが不登校の発症が早く、男女ともに「いじめ」が不登校と有意に関連していました(Ochi et al., 2020)。ASDとADHDが併存する群で、いじめによる登校しぶりのリスクが最も高いという報告もあります(McClemont et al., 2020)。

ただし「特性があるから不登校になる」ではありません

研究が示しているのは、もっと具体的な媒介要因です。

つまり、特性そのものではなく、特性と環境のあいだで起きていることが問題です。だから、環境の側を変えると状況が動きます。

保護因子として報告されているものもあります。教室内の支援員がいること(McClemont et al., 2020)、保護者と教師の関係が良好であること(Totsika et al., 2023)。どちらも、子どもを変えるのではなく、周りを整える話です。

国の方針は、すでに変わっています

学校復帰は前提ではありません

2019年10月25日の文部科学省通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」は、次のように述べています。

「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があります

この通知により、学校復帰を前提としていた過去4つの通知が廃止されました。 「学校復帰を目指さなくてよい」は個人の見解ではなく、国の方針です。

休むことは、法律に書かれています

教育機会確保法(2016年)第13条は、「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」た支援を求めています。文部科学省のリーフレットにも「不登校は問題行動ではありません」と明記されています。

ただし国は、「休んでよい」と「放置してよい」を区別しています。2024年8月の成績評価に関する通知には「必要な程度を超えて不登校の期間が長期にわたることを助長しないように留意」という一文もあります。休養を保障しながら、学びと関わりを絶やさない。これが現在の立場です。

COCOLOプラン

2023年3月に公表された「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」が、現在の国の対策の枠組みです。柱は3つ。

  1. 不登校の児童生徒全ての学びの場を確保する(学びの多様化学校を全国300校へ、校内教育支援センターの設置促進、教育支援センターの機能強化)
  2. 心の小さなSOSを見逃さず「チーム学校」で支援する(1人1台端末を使った早期発見、福祉部局との連携、保護者支援)
  3. 学校の風土の「見える化」

進捗も出ています。学びの多様化学校は2026年4月時点で全国84校(公立59校・私立25校。2年前は35校)。校内教育支援センターは令和6年7月時点で12,712校、公立小中学校の46.1%に設置されています。

学校に行かなくても、出席になります

意外と知られていないのが、出席扱いの制度です。令和6年度は、

自宅学習を出席扱いにするには、保護者と学校の連携、定期的・継続的な対面指導、計画的な学習プログラムなどの要件があります(2019年通知 別記2)。まず学校に「この制度を使いたい」と伝えるところから始まります。

最初にすることは、立場によって違います

このサイトでは、立場ごとに記事を分けています。

注意点

「発達障害だから不登校になった」という説明は、正確ではありません。 研究が示しているのは、不安・感覚・実行機能・いじめ・学校側の理解不足といった媒介要因を通した関係です。診断名から結論を出すのではなく、その子が学校のどの場面でつまずいているかを具体的に見てください。

また、不登校への介入の効果には限界があります。 認知行動療法ベースの介入を検討したメタ分析では、対照群と比較したときの出席への効果は中程度(g=0.44)でしたが、不安と抑うつには有意な効果が見られませんでした(Jakobsen et al., 2025)。含まれたRCTはわずか4件です。

さらに重要な知見があります。2024年に発表されたRCTでは、モジュール型の認知行動療法と通常ケアを比較したところ、出席率では両群に差がありませんでした。差が出たのは、情緒面の問題、仲間関係、そして本人と保護者の自己効力感でした(Johnsen et al., 2024)。

登校日数だけを成果指標にすると、支援の価値を見誤ります。

よくある質問

Q. 無理にでも行かせたほうがいいのでしょうか A. 「強制的に登校させること」の是非を直接検証した研究は見つかりませんでした。ただ、国の方針は休養の必要性を認めており、研究も「登校させること」より「登校を困難にしている不安と環境要因を減らすこと」を支持しています。一方で、認知行動療法の介入では段階的に学校に近づいていく手続き(曝露)が用いられており、「一切関わらない」が標準的な支援像でもありません。

Q. 学校に行かないと、勉強が遅れませんか A. 遅れは実際に起こりえます。だからこそ出席扱い・成績評価の制度があります。校内教育支援センターについて、国は「学習の遅れやそれに基づく不安の解消とともに、学習や進学に関する意欲を早期に回復しやすい効果が期待される」としています。

Q. 診断がないと支援を受けられませんか A. 校内の支援、教育支援センター、スクールカウンセラーへの相談に、診断は必要ありません。通級による指導も、診断名ではなく教育的なニーズで判断されます。

Q. 高校に進学できますか A. 進路の選択肢は広がっています。通信制高校に在籍する生徒は305,221人、高校生全体の9.6%です(令和7年度学校基本調査、2025年8月公表)。約10人に1人が通信制で学んでいます。

参考文献